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サボテンの胴切りはルートンで成功!使い方と発根のコツ

E.K.

ガーデニングの専門家:15年以上の業界の経験に基づいた情報を発信していくように意識をしており可能な限り読者に有益なブログ作成を目指して日々更新しております。

大切なサボテンが根腐れや徒長を起こしてしまい、柱サボテンの胴切りに踏み切るべきか悩んでいませんか。いざ挑戦するにも、面取りの方法や、サボテンの切り口に塗る殺菌剤の選び方、そして発根促進剤であるルートンの正しい使い方が分からず、不安に思うかもしれません。特に、ベンレートトップジン、活力剤のメネデールはそれぞれ役割が異なり、どれをいつ使えば良いか迷うことも多いでしょう。また、適切な処置をしても「発根しない」という最悪の事態は絶対に避けたいものです。この記事では、サボテンの胴切りでルートンを効果的に使い、成功率を格段に上げるための具体的な手順とコツを、専門家の視点から分かりやすく解説します。

この記事で分かること

  • ルートンや各種殺菌剤の正しい使い方と役割の違い
  • 初心者でも失敗しないサボテン胴切りの全手順
  • 胴切り後に発根しない、カビが生えるといったトラブルの対処法
  • 胴切り後のサボテンを健康に育てるための管理方法

成功へ導くサボテンの胴切りとルートンの基本

  • 柱サボテンの胴切りで押さえるべき点
  • 発根を左右する切り口の面取りの重要性
  • サボテンの切り口に使う殺菌剤の選び方
  • 殺菌剤ベンレートの特長と使用法
  • 保護剤としてのトップジンの役割

柱サボテンの胴切りで押さえるべき点

サボテンの胴切りは、株を救うための外科手術のようなものです。特に柱サボテンの胴切りを成功させるためには、いくつかの基本ポイントを押さえる必要があります。

まず最も重要なのが、作業を行う時期です。サボテンの生育期である春(3月~5月)や秋(9月~10月)が最適とされています。この時期はサボテンが活発に成長するため、切り口からの回復や発根がスムーズに進みやすいからです。逆に、休眠期にあたる真夏や真冬は、回復が遅く、切り口から腐敗するリスクが高まるため避けるのが賢明です。

次に、準備するものです。以下の道具を揃えましょう。

  • よく切れる清潔な刃物:カッターナイフや包丁など。刃は作業の都度、アルコールやライターの火で炙るなどして必ず消毒してください。
  • 厚手の手袋:トゲから手を守るために、ゴム手袋や皮手袋がおすすめです。
  • 新聞紙や作業用マット:作業スペースを汚さないために敷いておきます。
  • 殺菌剤や発根促進剤:後述するベンレートやルートンなど。

刃物の消毒の重要性

サボテンは人間と同じで、切り口から雑菌が入ると病気になってしまいます。特にウイルスは目に見えないため、刃物の消毒は胴切りの成否を分ける非常に重要な工程です。少し面倒に感じても、カットのたびに消毒する習慣をつけましょう。

カットする位置は、根腐れしている場合は変色している部分やブヨブヨしている部分よりも、少し上の健康な組織で切ることが大切です。徒長が目的の場合は、バランスの良い形になる位置でカットします。躊躇すると切り口が荒れてしまうため、思い切って一気に水平に切断するのがコツです。


発根を左右する切り口の面取りの重要性

サボテンの胴切りにおいて、ただ水平にカットするだけでなく「面取り」という一手間を加えることが、その後の発根率を大きく左右します。

なぜなら、サボテンの切り口は乾燥するにつれて中心部が収縮し、お皿のように凹んでしまう性質があるからです。この凹みに水が溜まったり、植え付けの際に土と切り口の間に隙間ができたりすると、カビや腐敗の原因となります。面取りは、この乾燥による変形を防ぐための重要な工程なのです。

具体的には、カットした断面のフチを、鉛筆の芯を削るようなイメージで斜めに削ぎ落としていきます。中心の維管束(水分や養分が通る管)が一番高くなるように、やや円錐状に整えるのが理想です。

面取りを行うことで、切り口が平ら、もしくは緩やかな山形に乾き上がります。これにより、植え付け時に切り口全体が用土にしっかりと接地し、中心の維管束周辺からのスムーズな発根を促すことができるのです。

この作業を行う際も、刃物はその都度消毒することを忘れないでください。少しの手間を惜しまないことが、大切なサボテンを救うことに繋がります。


サボテンの切り口に使う殺菌剤の選び方

胴切り後のデリケートな切り口を雑菌から守るため、サボテンの切り口に殺菌剤を塗布することは非常に有効な手段です。ただし、薬剤にはそれぞれ異なる特長があるため、目的に合わせて適切に選ぶ必要があります。

主に使われる薬剤は、その役割から大きく3つのタイプに分けられます。

  1. 殺菌タイプ:切り口に付着した、あるいは付着する可能性のある病原菌を殺菌し、腐敗を防ぎます。代表的なものに「ベンレート」があります。
  2. 保護タイプ:切り口を物理的な膜で覆い、水や雑菌の侵入を防ぎます。「トップジンMペースト」がこのタイプに当たります。
  3. 発根促進タイプ:植物ホルモンの力で、根の発生を促します。この記事の主役である「ルートン」が代表格です。

これらの薬剤は、単体で使うこともあれば、組み合わせて使う場合もあります。例えば、カット直後にベンレートで殺菌し、乾燥させた後にルートンを塗って発根を促すといった使い方です。

薬剤選びのポイント

どの薬剤を使うか迷った場合は、「まず殺菌して腐らせないこと」を最優先に考えましょう。発根はサボテン自身の生命力でも可能ですが、一度腐敗が始まると手遅れになることが多いからです。特に、梅雨時期など湿度が高い環境で作業する場合は、殺菌剤の使用を強く推奨します。

次の項目から、それぞれの代表的な薬剤について、より詳しく解説していきます。


殺菌剤ベンレートの特長と使用法

ベンレート(一般名:ベノミル水和剤)は、広範囲のカビ(糸状菌)に効果があるとされる殺菌剤で、サボテンの胴切り後の腐敗防止によく用いられます。

最大の特長は、水に溶かさず粉末のまま手軽に使える点です。カットしたばかりの瑞々しい切り口に、ベンレートの白い粉末を直接、筆や綿棒などで薄くまぶすように塗布します。切り口の水分で粉末が自然に付着し、病原菌の侵入を防ぐバリアの役割を果たしてくれます。

このように言うと非常に便利な薬剤ですが、使用にあたっては注意点もあります。

農薬使用に関する注意

ベンレート水和剤は農薬取締法に基づき登録された農薬です。本来は水で希釈して使用することが定められており、多肉植物への適用も明記されていません。粉末のままの塗布はあくまで愛好家の間で広まった使用方法であり、メーカーが推奨するものではないことを理解しておく必要があります。使用する際は、自己責任の範囲で行ってください。

また、ベンレートは主にカビ系の菌に効果を発揮しますが、細菌性の病気には効果が期待できない場合もあります。万能薬ではないため、作業環境を清潔に保つ、切り口をしっかり乾燥させるといった基本的な管理が大前提となります。

ホームセンターや園芸店で、少量から手軽に入手できる点は大きなメリットです。胴切りに挑戦する際は、お守りとして一つ用意しておくと安心でしょう。
(参照:住友化学園芸 GFベンレート水和剤


保護剤としてのトップジンの役割

トップジンMペーストは、木の剪定後の切り口などに塗る「癒合剤」として知られていますが、サボテンの胴切りにも応用されることがあります。

この薬剤の役割は、殺菌というよりも物理的な「保護」にあります。ペースト状の薬剤が乾燥すると、切り口にフィルム状の膜を形成し、まるで「かさぶた」のように外部からの水分や雑菌の侵入を防いでくれます。

ベンレートがカット直後の濡れた切り口に使うのに対し、トップジンMペーストは、切り口の表面がある程度乾いてから塗布するのが一般的です。濡れた状態で塗ると、サボテン内部の水分でペーストが薄まり、垂れてしまうことがあるためです。

メリットは、強力な保護膜による安心感ですが、デメリットも存在します。

トップジン使用時の注意点

保護膜が強力な反面、通気性が悪くなるため、高温多湿の環境下では膜の内側で蒸れてしまい、かえって腐敗を助長するリスクがあります。風通しの良い乾燥した環境で管理することが、トップジンを効果的に使うための絶対条件と言えるでしょう。

また、この保護膜を破って根が出てくるため、発根の妨げになるという意見もあります。そのため、最近では殺菌効果のあるベンレートや、発根を直接促すルートンの方が好まれる傾向にあるようです。しかし、大きな切り口を確実に保護したい場合や、乾燥した冬場に作業せざるを得ない場合など、状況によっては有効な選択肢の一つとなります。
(参照:日本曹達株式会社 トップジンMペースト


失敗しないサボテンの胴切りとルートン活用術

  • 発根促進剤ルートンの正しい使い方
  • 活力剤メネデールとの目的の違い
  • なぜ胴切り後に発根しないのか?
  • 胴切り後のカビの発生と対処法
  • 根付くまでの水やりと管理のコツ

発根促進剤ルートンの正しい使い方

ルートンは、サボテンの胴切りや挿し木において、成功率を格段に高めてくれる心強い味方です。その主成分は「α-ナフチルアセトアミド」という植物ホルモンの一種で、植物自身の細胞分裂を活発化させ、根の形成(カルス形成)を強力に促進する働きがあります。

このルートンの使い方で最も議論が分かれるのが、塗布するタイミングです。主に2つの方法があり、それぞれにメリットがあるため、状況に応じて使い分けるのが良いでしょう。

タイミング 方法 メリット デメリット・注意点
カット直後 カットした瑞々しい切り口に、直接ルートンの粉末を薄く塗布する。 切り口の細胞が最も活性化している状態でホルモンを作用させられるため、効果が発揮されやすい。 切り口の乾燥が不十分だと、腐敗のリスクが残る。殺菌剤との併用が推奨される。
乾燥後 切り口を数日~1週間ほど乾燥させた後、植え付け直前に塗布する。 腐敗のリスクを最小限に抑えられる。安全性を重視するならこちらがおすすめ。 一度乾いた組織に塗るため、効果が薄れる可能性があるという意見もある。

どちらの方法でも、つけすぎは禁物です。植物ホルモンは、濃度が高すぎるとかえって成長を阻害することがあります。綿棒や乾いた筆などを使い、切り口に薄い膜を作るように、均一に塗布することを心がけてください。

実験結果から見るルートンの効果

多くの愛好家の実験において、ルートンを塗布したサボテンは、何も塗布しなかったものや他の殺菌剤のみを塗布したものと比較して、発根のスピードと量において明らかに優れていたという報告が多数あります。科学的根拠に基づいた発根促進効果は、非常に信頼性が高いと言えるでしょう。

大切なサボテンを確実に再生させたいなら、ルートンはぜひとも用意しておきたいアイテムです。
(参照:住友化学園芸 ルートン


活力剤メネデールとの目的の違い

サボテンの管理において、ルートンと共によく名前が挙がるのが「メネデール」です。この二つは混同されがちですが、その役割と目的は全く異なります。

一言で言えば、ルートンが「発根させる」ための攻めの薬剤であるのに対し、メネデールは「株全体を元気にする」ための守りの資材です。

ルートンとメネデールの主な違い

  • ルートン:植物ホルモンが主成分の「発根促進剤」。根がない状態から根を出させることに特化しています。
  • メネデール:二価鉄イオンが主成分の「植物活力剤」。光合成を助け、植物全体の生命力を高めます。すでに生えている根の成長を助ける効果はありますが、根をゼロから作らせる直接的な作用はありません。

このため、胴切りにおける効果的な使い分けは以下のようになります。

まず、カットした切り口には「ルートン」を塗布し、発根を直接促します。そして、無事に発根し、植え付けた後の水やりから「メネデール」の出番です。メネデールを規定の倍率に希釈した水を水やりの際に与えることで、新しい根の伸長を助け、株全体の回復をサポートします。

「切り口にメネデール原液を塗る」という方法を紹介する情報も見られますが、これはどちらかというと応急処置的な意味合いが強いようです。発根を確実に狙うなら、やはり専門の発根促進剤であるルートンを使用するのが最も効果的と言えるでしょう。

ルートンで根を出し、メネデールで育てる。この役割分担を理解することが、サボテンを健康に管理する上での鍵となります。
(参照:メネデール株式会社 公式サイト


なぜ胴切り後に発根しないのか?

適切な手順で胴切りを行ったはずなのに、一向に根が出てこない。これは、サボテン栽培で最も心が折れそうになる瞬間のひとつです。発根しないのには、必ず何かしらの理由があります。

主な原因として、以下の4つが考えられます。

1. 時期が不適切

前述の通り、サボテンの成長が緩慢になる真夏や真冬に胴切りを行うと、発根までに非常に長い時間がかかったり、体力を消耗してそのまま枯れてしまったりすることがあります。最適なのは、やはり生育期である春か秋です。

2. 切り口の乾燥が不十分

切り口が完全に乾ききる前に土に置いてしまうと、切り口が呼吸できずに腐敗を始めることがあります。見た目は乾いているようでも、内部はまだ湿っていることも。品種や大きさにもよりますが、最低でも1週間、大きいものなら1ヶ月以上乾燥させるくらいの気長さが必要です。

3. 腐敗部分の取り残し

根腐れが原因で胴切りした場合、カットした断面に少しでも茶色や黒い変色部分が残っていると、そこから再び腐敗が進行してしまいます。「もったいない」と思わず、変色が見られなくなるまで、念入りにスライスを繰り返すことが重要です。

4. サボテンの体力不足

長期間にわたる日照不足や水切れで、サボテン自体の体力が著しく低下している場合、発根するためのエネルギーが残っていないことがあります。胴切りした株がシワシワになっていく一方の場合は、この可能性が考えられます。

発根を気長に待つことも大切

サボテンの品種によっては、発根に数ヶ月単位の時間がかかるものも珍しくありません。特に大きな株ほど時間がかかる傾向にあります。腐ったりカビたりしていなければ、まだ生きている証拠です。焦らず、適切な環境で見守ってあげましょう。


胴切り後のカビの発生と対処法

胴切り後のサボテン管理で、最も警戒すべきトラブルが「カビの発生」です。せっかく助かるはずだったサボテンが、白い綿のようなカビに覆われてしまうのは非常によくある失敗例です。

カビが発生する主な原因は、シンプルに「湿度が高すぎること」「風通しが悪いこと」です。胴切り後の傷ついたサボテンにとって、ジメジメした環境は雑菌の温床となってしまいます。

もし、乾燥させている切り口にカビを発見してしまったら、どうすればよいのでしょうか。

カビを発見したら即座に対処を!

カビを見つけたら、絶対に放置してはいけません。迷わず、以下の手順で対処してください。

  1. 再カット:清潔な刃物で、カビが生えている部分を完全に切り落とします。この時も、健康な組織を少し余分に切り取るくらいが安全です。
  2. 再殺菌:新しい切り口に、ベンレートなどの殺菌剤を再度塗布します。
  3. 乾燥環境の見直し:これまで置いていた場所よりも、さらに風通しが良く、乾燥した場所に移動させます。サーキュレーターなどで緩やかに風を当てるのも非常に効果的です。

カビの発生を防ぐためには、胴切り作業をなるべく湿度の低い晴れた日に行うことや、作業に使う道具や手を清潔に保つことが大前提となります。特に、梅雨の時期などは室内であっても湿度が高くなりがちなので、除湿器を活用するなど、環境管理に細心の注意を払いましょう。


根付くまでの水やりと管理のコツ

無事に切り口が乾燥し、いよいよ植え付け(土の上に置く段階)に進んだ後も、本当の意味で安心できるわけではありません。新しい根がしっかりと張り、株が安定するまでの管理が、その後の成長を大きく左右します。

最も重要なポイントは、「水やり」のタイミングです。

結論から言うと、発根が確認できるまでは、原則として水やりは一切行いません。根がない状態で水を与えても吸い上げることができず、切り口や用土が湿ったままになり、根腐れを再発させる最大の原因となるからです。

では、どのように管理すればよいのでしょうか。

  • 置き場所:直射日光が当たらない、明るい日陰に置きます。強い日差しは株の体力を奪い、日焼けの原因になります。また、風通しの良い場所を選ぶことも、カビや腐敗を防ぐ上で非常に重要です。
  • 固定:株がぐらつくと、せっかく出ようとしている新しい根が傷ついてしまいます。鉢の縁に割り箸を渡して支えたり、軽い軽石などで株元を優しく固定したりして、安定させてあげましょう。
  • 発根の確認:1ヶ月ほど経ったら、株を優しく揺すってみます。少し抵抗を感じるようであれば、根が張り始めている証拠です。この確認ができるまでは、決して株を持ち上げたりしないように我慢してください。

最初の水やり

発根が確認できたら、いよいよ最初の水やりです。鉢底から水が流れ出るまでたっぷりと与え、その後は用土が完全に乾いてから次の水やりを行う、という通常のサボテン管理に切り替えていきます。この最初の水やりの際に、メネデールなどの活力剤を混ぜて与えると、その後の成長がよりスムーズになります。


まとめ:サボテンの胴切りとルートン活用の要点

この記事では、サボテンの胴切りを成功させるための手順と、発根促進剤ルートンの効果的な使い方について解説しました。最後に、重要なポイントをリストで振り返ります。

  • 胴切りはサボテンの生育期である春か秋に行うのが最適
  • 刃物はカットのたびに必ず消毒し清潔に保つ
  • 切り口は乾燥後の凹みを防ぐため面取りを行う
  • ルートンは根の発生を促す植物ホルモン剤
  • 殺菌剤のベンレートは腐敗防止に効果的
  • 保護剤のトップジンは物理的に切り口を保護する
  • 活力剤のメネデールは発根後の成長をサポートする
  • ルートンはカット直後か乾燥後に薄く塗布する
  • 発根しない原因は時期、乾燥不足、腐敗の取り残しなど
  • カビが発生したら迷わず再カットして殺菌する
  • 乾燥させる際は風通しの良い明るい日陰に置く
  • 発根が確認できるまで水やりは絶対に行わない
  • 株がぐらつかないように軽く固定してあげる
  • 発根確認は1ヶ月後くらいに優しく揺すって確かめる
  • 焦らず気長に待つことが成功への一番の近道

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